デッドリードライブ 〜諏訪篇〜(第7話)

 飯田方面に向かい始めて間もない頃。
 僕の体に変調が起こりました。意識が遠くなり、目の前が徐々に暗くなっていきます。
 こ、これはッ! まさか睡魔のヤツが俺に牙を剥きやがったんじゃあ(笑)!?
 日頃から、仲間内で車を出すことが多い僕は、『1番大変な運転手を差し置いて、乗せてもらっているヤツが寝るんじゃねぇ』との信念のもと、誰かがコクリコクリしようものなら、時には大声で話しかけ、時には『運転してねぇヤツが寝るんじゃねぇ』と大声で暴れたりするのが常。
 それにも関わらず、散々無双祭さんに迷惑をかけた挙句に車を出させたばかりか、助手席で爆睡したなんてことが世間に漏れた日には、大ひんしゅくを買うのは目に見えています。
 特に少し寝ただけでも、僕にボロクソ言われるジョイトイに至っては、この事実を掴んだ日には、脅迫の1つや2つ、平気でしてくるに違いありません。
 お、俺は、絶対に眠るわけにはいかな……グフッ!
 俺の仲間達よ。ここで提案があります。これからは車に乗せてもらっている側の人間が、眠るのを認めるというのはどうだろう?
 もちろんこれは、積極的に眠ることを推奨するものではございません。運転手に退屈や睡魔が襲い掛からないよう、声掛けすることを念頭に置いてもらわねばならないのは、従来のとおりですが、ほら、お昼を食べて、お腹いっぱいで、疲れているときなんか、やることなく座っていると、もう寝るしかないぐらいに追い詰められることってあるじゃん。そのときだけちょっと眠るとかの、仕方ない睡眠については、お互い様でって、俺は言いたいんだよ。わかってくれるよねぇ。
 ……こんな言い訳がましいことを書いたのは、もちろん私ゲンが、無双祭さんの運転する助手席で大爆睡してしまったからです。
 諏訪湖の西岸付近で意識を失った俺が、はっきりと意識を取り戻したのは、以前、無双祭さんと立ち寄った『きし麺屋』(1年前の美味しい蕎麦を求めた旅で立ち寄った店。腹が減りすぎて、のぼりの『そば』の字だけを見て立ち寄って、そばを食すもイマイチ。そりゃ、きし麺が専門の店でそばを食っても美味くないのが道理というのがオチ。詳細は当時のブログで確認下さい)の店頭に設置された自販機で、ジュースを買おうと、車を停めたときのこと。
 そのきし麺屋があるのは、飯田市の校外。
 つまり諏訪から飯田の行程を、僕は助手席で眠っていたわけです……疲れてたんだッ! 疲れていたんだよッ!
 自分が運転手で他の人が眠ったときに、誰よりもひどく怒る男が、我侭の限りを尽くした挙句、人に車を出させて、その助手席で誰よりも長く寝た話は、もう少しだけ続きます。
 うん、なんか、今回の1件で、死後、天国に行くのは諦めた方が良さそうだよ、俺。 (つづく)