デッドリードライブ 〜天橋立篇〜(第4話)

 対岸まで遥か彼方へ伸びる道。標識を見ると、対岸までの距離、およそ4キロ。5月とはいえ結構な暑さの中、心の準備および体の準備(服装とか)も全然できていない中、いきなりそんな距離を歩く気には、とてもなりません。
 僕は無双祭さんの様子を窺います。
「む、む、無双祭さん。どうします、これ? 本気で行きますか? 片道4キロだって」
「せっかく来たんだし、まぁ歩いてみようよ」
 この人、歩く気だッ!
 とはいえ、さほど自分が歩きたくない以上に、歩いて先に進むには、大きな問題があることに僕は気がつきました。
 駐車場の係員のおじさん(テレビのオリックス中継に夢中)曰く。駐車場は5時に閉まる。現在の時刻は3時を回ったところ。人間の歩行速度は、時速4〜5キロ。天橋立は片道4キロ。
 義務教育を受けた方ならわかりますよね? 僕に生じた問題意識が。このまま歩いていって往復したら、戻って来た頃には、駐車場が封鎖されていると思ったのです。
 そのことも踏まえて、僕は妥協案を出します。
「歩くのは、駐車場の時間もあるし、止めた方がいいんじゃない? どうしても行くというのであれば(なんかロープレみたいな台詞だね)、せめて、その辺の店で、自転車をレンタルしてみては?」
 僕の発言は、天橋立到着後、自転車の貸し出しをしている店が乱立していたことによるもの。あれらの店は、俺達みたいな人への救済措置だったんだねぇ。
 しかしながら、我らのリーダーの応えはNO。
「いやいや、自転車もいいけれど、ここまで来たからには、一歩、一歩、天橋立まで来たことを踏みしめながら歩こうよ。男塾名物、直進行軍じゃあッ!」
 旅の発案者が、そこまでの覚悟ならば……と、僕は無双祭さんに従って歩くことにしました。
 なーに、どうしても駐車場が封鎖されてしまったら、俺が封鎖しているチェーンを引きちぎるなり(笑)、重しをどかすまでよッ!
 こうして僕らは4キロの道を歩き始めたのでした。
 感想としては……そうだな、右も左も海が見える三保の松原って感じですかね。無双祭さんも似たようなことを言っていたし。
 チャリで僕らを追い越していく人を襲って、チャリを奪い取ろうといった邪な考えを抑え込みつつ、僕らはあまり会話を交わすこともなく、4キロの道を歩いたのでした。 (つづく)