これじゃ本当の美食倶楽部(第5話)

「あー、こいつは美味いね……」
「ホントだね……」
 望まない鮎の塩焼きを頬張りながら、心にもないことを口にする僕と、無双祭さん。さすがのジョイトイも、これは嫌味を言われていると気付いたのか、次のような言い訳(?)を並べます。
「いや、俺もさ、鮎の塩焼きが本当に美味いもんじゃないってことは、わかっていたんだよ。たださ、ああやって売られていると、なんか雰囲気が良いと言うか、買ってみたくなるんだよ!」
 あー、祭りとかでりんご飴が美味そうに見えて買ってはみたものの、単調な味に嫌気が差して、結局、残しちゃうのと同じことね。……たぶん。
 とはいえ、奢ってもらっているのに悪態をついては下衆ですし、食べ物を粗末にしてはいかんと思ったか、僕も無双祭さんも、もちろんジョイトイも鮎を完食しました。
 きっと熱中症対策に塩分を取った方が良いとの考えから、ジョイトイが気を利かせてくれたんですよね。ああ、きっとそうだ、そうなんだ……ん、鮎の小骨が口に刺さりましたかねぇ、イテェェェェよッッッ!
 こうして竜ヶ岩洞での一悶着の後、僕らは昼食を食べるべく、近くのある某鰻店へと向かいました。
 店の実名報道を避けたことから、結果は賢明なみなさんにはお分かりかもしれませんが、とりあえず様子をご覧下さい。
 高級そうな店構えだったことから、期待に胸を膨らませて店に入ると、1番安い鰻丼が2500円もする始末。こ、こ、こいつはちょっと想像を絶する美味さなんじゃないの!とりあえず昼飯から、高級なのを頼んでは後が続かないと思った僕とジョイトイは、1番安い2500円の鰻重を、無双祭さんは鰻重に刺身の付いた〇〇〇定食(空白には店名が入ります)を注文しました。
 はてさて、注文を終えたところで、ひとつトイレでも済まそうかと、厠に行って帰って来た直後のこと。
「お待たせしました〜」
 と、店員の声がしました。
 さっき注文したばかりの俺達のテーブルに、もう料理が届けられるわけがないよな。きっと、他所のテーブルの料理だろう。
 などと、のん気に構えていると、これがあろうことか、僕らのテーブルの料理じゃありませんか!
 そこいらのファミレスより早く出て来た鰻料理に、僕らは愕然としました。
 さぁ、次週いよいよ実食です! ……だから結果がわかっているとか言わないの! (つづく)