これじゃ本当の美食倶楽部(第8話)

 フルーツパークを出たところで、時刻は午後3時。
 僕らは、いよいよジョイトイが行きたいといった中田島砂丘に向かうことにしました。
 しかし、僕と無双祭さんの中には、拭いきれない疑問がありました。そうです。なぜ彼は中田島砂丘に行きたがるのかと言うことです。中田島砂丘へいっても、特に何もないのに……。
 しかしながら、1人が1箇所行きたいスポットを考え、そこに行くのが、ツアーの大原則であり、公平性を保つに必要なことであるため、僕と無双祭さんは、疑問を口にすることはありませんでした。
 僕は車を中田島砂丘へと向かわせました。
 田舎道から徐々に市街地、そして海岸沿いの道へ。約1時間かけて、30キロ程の道のりを進み、僕らは中田島砂丘へとやって来ました。
 そして車を降りて、砂丘付近に向かったものの、当然ながら辺りは1面、普通の砂浜。それ以上でも、それ以下でもありません。
 しばらく、無言で立ち尽くしていた僕らですが、そのうちに無双祭さんが波打ち際へ、ジョイトイが砂浜を西へと、それぞれ何の前触れもなく歩き始めました。僕は、その場で2人を待ちつつ、海を眺めていました。
 え、眺めていたのは、海じゃなくて、近くにいた水着姿の日系ブラジル人の尻じゃねぇかって? 
 そうそう。ブラジルの女の人達って、みんな、なんだって、あんないいケツしてやがるんですかねぇ。あの肉感が堪らん……って、いったい何を言わせるですか!
 以上、ノリ突っ込みでしたが、誰もこの書き方じゃ、冗談だとは思いませんな。
 そうこうしているうちに、ジョイトイと無双祭さんが戻って来たので、僕らは車に戻ることにしました。
 その最中、当然ながら僕は、こんな1瞬で見学が終えるようなところを、観光スポットに選んだジョイトイへの非難に徹します。
「なんだって、こんなところに来たかったんだ、おめぇは」
「いやさ、砂丘と言うからには、もうちょっと何かあると思ってさ」
「あー、鳥取砂丘みたいに、駱駝が歩いているような、一大観光地だと思ったわけね。……そんなわけねぇだろ!」
「うるさいな! 水着のお姉ちゃんが見られたんだから、つべこべ言うんじゃない!」
 むっ、こいつ、痛いところを突きやがる。
 このままだと泥仕合になると思った僕は、ジョイトイ批判を止めることにしました。
 車に戻った僕らは、いよいよ本日のメインイベント。無双祭さんお墨付きの鰻屋へ向かうべく、浜松駅方面に向けて出発しました。 (つづく)