これじゃ本当の美食倶楽部(第9話)

 中田島砂丘から浜松駅付近までは、そう距離はなく、10分ほどのドライブで、到着しました。停めやすかったコイン・パーキングに車を置いた僕らは、無双祭さんの案内で、件の鰻屋へと向かいました。
 歩くこと、およそ5分。駅付近の繁華街の一角に、明治創業の看板が掛かった純和風の建物が見えて来ました。
「ここが、その鰻屋だよ」
 紹介してくれた無双祭さんに、僕が返事します。
「如何にもといった感じの店構えですなぁ。……開店が5時15分だって」
 腕時計に目をやると、現在の時刻は4時30分。およそ45分程、時間に余裕があります。そこで僕は提案します。
「どうだろう? せっかく浜松まで来たことだし、ここで1度、解散して、各自好きな店を見て周り、開店時刻になったら、再びここに集合するというのは?」
 そんなもっともらしい提案をしたのは、フルーツパークで食べたかき氷で腹を冷やしたのが良くなかったのか、もよおしたからに他なりません。
 ああ、俺はそんな自分勝手やろうさ!
 半ば強引に自分の提案への承諾を得ると、僕は一目散に近くのデパートに。デパートはトイレが綺麗かつ設備が良いことが多いので、旅先でトイレパニックに陥ったときなどに、立ち寄るには大変重宝するのです。
 なっ、俺のトイレ理論など聞きたくないって? オッケー。
 何はともあれ、事なきを得た僕は、早くも次なる目的地に向かって歩き出します。次なる目的地、それはコンビニ。予定以上の出費で、財布の中身が心もとなくなったので、現金を出金することにしたのです。
 しかし、残念なことに、どんな時間帯でも出金可能な(手数料はかかる)セブンイレブンを見つけることができず、あったのは、サークルKとローソン。念のために試してみるものの、やはり曜日時間帯制限の関係で、出金はできない模様。
 やっぱセブンを見つけなきゃ話にならねぇな……。
 そんなことを考えながら、トボトボと歩いていると、いつの間にか、先程、無双祭さんが紹介してくれた鰻屋の前の通りに出ていたようです。
 ああ、戻って来ちまったな。そろそろ5時15分に近いし、とりあえず現金出金は諦めて、2人と合流するかな。
 なんて、呑気に歩いていると、先程は影形も見えなかった行列が、鰻屋の前にできているじゃありませんか!
 おおおッ! なんと、ここまでの人気店であったか!?
 果たして、無事に鰻は食えるのか!? 次回に続きます。 (つづく)