これじゃ本当の美食倶楽部(第10話)

 ここまでの店だったら、開店時間ちょうどの集合じゃなくして、もう少し早い時間に集合しときゃ良かったな。
 僕が苦虫を噛み砕いた様な顔をしながら、列に並ぶと、間もなく無双祭さんもやって来ました。
「うわぁ、並んでいるねぇ」
「ホント、こんなことなら、もう少し早めに集まれば良かったね」
「確かに。昼しか来たことがなかったから、夜の様子が分からなかったんだけど、まさかここまでとは」
 そんな話をしていた僕らは、列の前方に見慣れた男の後ろ姿を見つけました。もちろん、その男とは、ハルロー・オブ・ジョイトイであります。
 僕らは並ぶの止めてジョイトイに近づきました。
「おい、ジョイトイ。おめぇ、なんだって、こんな前の方に並んでやがるんだ?」
 すると、ジョイトイは、したり顔で応えました。
「クククク。やることなくて、5時くらいにここへ戻ってきたら、列ができていたから並んでいたのさ。店の人にも3人だと伝えてある」
 珍プレーばかりかと思ったが、たまにはファインプレーもするじゃねぇか!
 あとは、3人で一緒に並んでいなかったので、権利を剥奪されないか心配でしたが、開店時刻に3人集まっていれば、3人で入店が認められるとのことだったので、僕らは無事に席に案内されたのでした。
 良かったには、良かったのですが、自分の手柄を誇示しまくるジョイトイの活躍により、鰻にありつけたとあっては、あとで、『俺のおかげで〜』、『お前らが無事に鰻を食えたのは〜』などと、講釈を垂れられるのは必定。確かに、その通りなんで、いいっちゃいいんだけど、なんかねぇ(苦笑)。
 だったら言われる前に言っておこうと、
「ホント、俺らみたいな者(ゲン、無双祭)が、しっかり鰻を食えるよう、自分の自由時間を犠牲にしてまで、行列に並ぶなんて、ホント、ジョイトイさんの優しさは、天井知らずやで!」
 などと、冗談めかして言ったところ、
「いやいや、気にしなくていいっすよ♪」
 と、まんざらでもない様子。……きっと彼の家では、このときの活躍は、末代まで語り継がれることでしょう(笑)。
 おおっと! 今日で鰻を食べて云々みたいなところまで、話を進める予定が、ジョイトイ英雄譚が長引いてしまったので、肝心な話は、また次回にお伝えすることにしましょう。
 じゃあ、またね。 (つづく)