天下分け目の関ヶ原(第4話)

 3台の車のうち、最初に通過した2台は、たくさんの人を乗せたマイクロバスでした。勝手な想像ですが、来年の大河ドラマ縁の地として、地元のボランティアの方々が視察に来ていたのでしょう。うん、たぶん当たっているよ、この予想。
 と、そこまでは良かったのですが、問題は最後に通った軽トラ。横柄にクラクションを鳴らしたばかりか、中にいたおっさん2人が、こちらを睨んでいくではありませんか。
 感じ悪ッ、と思いながら、歩いていくと、僕は、おっさん2人の真意が垣間見える立て札を見つけました。
『山に入ってキノコを取った者は、法令により罰せられます』
 ああ、なるほど。車で行ける道を、わざわざ歩いている俺達を見て、キノコ泥棒と疑ったわけか。
 って、てめぇら、これから大河ドラマに乗じて、客を集めようってときに、わざわざ来た県外の客に対して、その態度はなんだ! てめぇらの血は何色だッ! 
 国民の皆さん、大河ドラマが始まっても、小谷城址に行くときは、このクソ野郎どもに気をつけて下さい。
珍しくリアルに気分を害しながらも、僕らは山登りを続けました。
 そして歩くこと30分。僕らは小谷山の中腹へとやって来ました。ちなみにここまでは車で登ることができるので、もし奇特な方が、僕らと同じ行程を実際に歩まれる場合には、車を使われることをオススメします。
 さて、ここまでは、ただの山道(片道1.6キロ)だったから、そろそろ史跡的なものを……と思った矢先、僕らの視覚に、とんでもない看板が飛び込んできました。
『熊、出没注意! 鈴もしくはラジオを持っていない方は、絶対に、ここから先に進まないで下さい』
 ええッ!? 絶対にここから先に進むなって(笑)。注意して進めならわかるけど、いち観光地の山で、ある装備なしに絶対に進むなって忠告は初めて見たよ。
 フリかと思って、進軍も考えたのですが、実際に赤カブト(わからない人は、昔の週間少年ジャンプを読み直して下さい)みたいな熊に襲われたりした日には、ブログのネタにできない、ちゅーか、普通の事故になってしまうので、僕らは山を下りる決断をしました。
 なんか期待外れで、すみません。つっても、もう30才が近いんで、堪忍してやって下さい。
 まぁ、なんですか。一言いわせてもらえれば、土砂降りの雨の中を1.6キロの山道を登った挙句に、何するわけでもなく、そのまま引き返すことになったというのは、地味ですけど、けっこうな罰ゲームだということです。
 憔悴仕切りで下山した僕らは、関ヶ原方面へと向かうべく、車に乗り込んだのでした。 (つづく)