美食倶楽部グルメツアー(第4話)

 食べ尽くされた、そばの巨大椀を傍目に、僕はクジにする白紙を各人に手渡します。
 各自の記入は以下のとおり。
ゲン 『浜松 ラーメン(天下一品)』
無双祭『伊豆 海鮮丼』
ホリコ『富士 牛ステーキ』
 と、ここまではまぁ良かったのですが、ここでジョイトイが他のメンバーを震撼させるある物を白紙に書いてしまったのです。
 ジョイトイ『沼津 カレー』
 僕が発狂したのは言うまでもありません。
「おおおいッ! ジョイトイ、てめぇ、今日はグルメツアーだぞ! カレーとは、どういう了見だ!」
「美味しいカレーならいいじゃないか。それにアンタの書いたラーメンだって、グルメじゃないでしょ」
 微妙に痛いところを突かれましたが、ここで屈するわけにはいきません。なんせ、ホリコも無双祭さんも、どん引きしているのが、俺にはわかったので。
「俺のは、浜松に行かなければ食べられないラーメンだからいいの! それよりも貴様、本気でカレーにすると言うのか?」
「ああ、俺に迷いはない。そもそもグルメツアーを企画するにあたって、誰かの好きな物を強制的に食わせるやり方だと、不公平感が生まれるから、それを避けるべく、くじ引きシステムにしたんだろ。だったら、俺が何を書いたって自由じゃないか」
 むぅ、そう言われると、反論のしようがないんだよな……。くそ、面白い企画にするべく考案したシステムを、逆に利用しやがって!
 ええい、こうなったら仕方がない! カレーを食わされる確率は4分の1! そうそう食わされるわけがないさ!
 開き直った僕は、ジョイトイにクジを引かせることにしました。疑り深い性格なので、他の人がクジを引き、カレー以外を手にした日は、不正を疑われる可能性が大いにあるので、僕は彼にクジを引かせることにしたのです。
 すると、クジを手に取り開いた彼は、僕らの方を一瞥し、ニヤリと笑いました。
「フフフ。カレー、引いてやったぞ」
 ギャァァァァァ!
 ジョイトイのテンション急上昇。反面、僕らのテンションが地の底に沈んだことはいうまでもありません。
 僕らは、(1名を除き)3連休の初日とは思えないテンションで、会計を済ませ、車に乗り込みました。 (つづく)