美食倶楽部グルメツアー(第6話)

 小雪がちらつく極楽苑の駐車場には、先客の車が1台だけ。
 え、土曜日の昼下がりに車が1台って……。
 僕の脳裏に浮かんだのは、以前にやっていたテレビ番組『銭形金太郎』、通称『銭金』で紹介されるような、グダグダな観光用施設。
 否、無双祭さんの紹介する施設に限って、そんなバカなことはあるものか!
 迷いを吹き払って、僕は先頭を切って、極楽苑へと進みます。
 無双祭さんが代表となり、4人分の入場券を購入してくれた(もちろん最終的には精算しますよ)ので、チケットを受け取り、館内へと入場。ちなみに入場料は、大人900円(秘宝館の入場料込み)。
 この値段設定が高いと思うか、安いと思うかは、本当に各人の施設を見終えた感想によって異なると思うんですよね。だから言及はしません。個人的には、900円を払う価値がある施設だと思います。
 それはさておき、館内に入場した僕らは、丸椅子に座るよう指示を受け、女性職員の方(おそらく受付をしていた男性職員と夫婦と思われる)から、人間が死んだ後、どのような手順を経て、次の行き場所(例:人間界へ転生、地獄行き、極楽行き、など)が決まるのかの説明を受けます。
 最初こそ、え、何もそんな感情込めて喋らなくても、俺達4人、みんな大人なんだから普通に喋ってくれてもいいのに。なんて思って見ていたのですが、慣れてくると、なかなかの名調子に聞こえてきるから不思議です。
 こんな風に、やや冷めた感じで見ていた人を、いつの間にか引き込んでしまうのって、なかなかできることじゃないと思います。こういうのを職人芸って言うんでしょうね。
 およそ5分程に渡る女性職員の説明を聞き終えたところで、僕らはいよいよ地獄巡り(施設の2階)に進みます。
 ここは文字通り、地獄を再現したジオラマ(けっこうデカイ)が造られており、ところどころに説明書きなどもあって、おどろおどろしいものが好きな人は、かなり楽しめるんじゃないかと思います。当然、僕も、そういったのが好きなので、たぶんに漏れず楽しめました。
 ただ感受性の強い小さな子供は、かなりの高確率でトラウマになると思うので、連れていかない方がいいと思います。これは僕の個人的な意見じゃなくて、参加者がみんな言ったことなので、間に受けてもらって結構です(笑)。
 そんなことを話しながら、しばらく進むと、閻魔大王ジオラマがありました。すると、その前に懺悔帳なるものが。当然ながら、懺悔したいことを書こうみたいなものです。
 まぁ、観光客に旅の足跡を残してもらおうと、施設側の人間が用意してくれた自由帳みたいなものですな。
 懺悔帳を見た僕は、メンバーの中に、懺悔しなければいけない男が混じっていることに気が付きました。 (つづく)