美食倶楽部グルメツアー(第7話)

 閻魔大王の作り物の前で、懺悔帳を見つけた僕は、展示物を先行して見ていた、あの男を呼び戻しに行きます。
「おい、ジョイトイ。ツラ、貸せや、コラ」
「なんだよ?」
 僕はジョイトイを懺悔帳の前まで連れ戻して告げました。
「お前、なに懺悔帳の前を素通りしてるんだよ。お前のこれまでの人生、懺悔しなきゃいけないことだらけだとは思うが、今日に限って、特別懺悔しなきゃいけないことがあるだろうよ」
「ああ? なんだよ、今日、特別に懺悔しなきゃいけないことって?」
「書け。『カレーを食わせてごめんなさい』と」
「……断る。俺はカレーを食う権利を、無理強いではなく、正規の形式で勝ち取ったんだ。それを懺悔する気にはなれない!」
 それだけ言うと、ジョイトイは憤慨したかのように、踵を返して、先程まで見学していた展示物の方へと、スタスタと行ってしまいました。
 ちっ、相変わらずバラエティのノリがわからないヤツだぜ。
 ううむ……しかし、このままにして、あいつが地獄に落ちてしまうのも可哀相だのぅ。
 そう思った僕は、ジョイトイに代わって懺悔帳に代筆しました。
『カレーを食わせてごめんなさい』
 と。
 うむ、これで良し。あいつも往生できるじゃろうて。いやはや、良いことをした後は、気持ちがいいですな。
 そう思って、清々しい気持ちで立ち上がった僕でしたが、僕の文面では、後で懺悔帳を見た人が、意味不明で笑えないと思ったのであろう、優しい無双祭さんが、
『* ホントは全員カレーを食いたくはなかったのだが、行きがかり上、食べざるを得なくなった』
 と、注意書きをしてくれました(今、行けばたぶんこれらの落書きあります)。
 これで誰が見ても、笑ってくれること請け合いですね。
 ホント、カップルとかが『ラブラブでごめんね』などと、反吐がでるような文言を書き連なっている懺悔帳に、一矢報いることができて良かったと思います。
 これで満足した僕は、全行程を見学して、地獄巡りを終えました。
 へー、地獄には幾つか種類があるのは知っていましたが、血の海地獄、砂地獄、焦熱地獄、竜巻地獄、ワニ地獄、宇宙地獄の6つじゃなくて、阿鼻地獄とか、叫喚地獄とかが、世間一般でいう地獄ことは、このときリアルに始めて知りました。
 なんで、前者の6つ=仏教の教えと思ってたいたかって?
 例の肉の影響ですよ、肉の!
 僕の悲しい勘違いの話はともかく、次回、いよいよ秘宝館に潜入です。 (つづく)