美食倶楽部グルメツアー(第12話)

 ジョイトイご推薦のカレー屋を目指し、グルメ街道を進んで行くと、沼津ICと一般道の分岐路にたどり着きました。当然ながら、一般道の方へとナビは指示しているのですが、これが相当わかりづらく、僕は本能に従って運転します。
 その結果、僕は沼津ICへと続く道に入ってしまったのでした。
「やべぇ! 間違えた!」
 高速道路入り口に向かってしまったと気が付いたときには、時、既に遅し。とても交通の流れに逆らって、引き返せる状況じゃありません。
「……ここでのUターンは、重大な事故を引き起こし兼ねない。悪いけど、一旦、高速に乗るよ」
 一方的に他の参加者らに断り、僕は高速へと入って行きました。
 ここで問題になってくるのが、ジョイトイのご機嫌です。昼前から散々、僕に『カレーを食わせやがって!』的な罵詈雑言を浴びせられていたにも関わらず、こんな形で強制的にカレーをシャットアウトされては、彼が黙っているはずありません。
 僕は先手を打って謝ることにしました。
ジョイトイ、すまん! けっしてわざとやったわけじゃないんだ、堪忍してくれ!」
 すると、ジョイトイは怒るどころか、柔和な声色で応えました。
「いや、ゲンさんがわざとやったわけじゃないのは、十分に承知している。さっきの道は複雑に入り組んでいたからな」
 おお、まったくジョイトイさんの優しさは、五大陸に響き渡るで!
 それどころか、ジョイトイから更なる意外な申し出がなされたのです。
「こうして1回、高速に乗ってしまったことだし、わざわざ次のICで降りて引き返さなくてもいいぞ」
 つまり彼は、自分が行きたかった沼津のカレー屋を見送っても良いと言っているのです。
 ホント、ジョイトイさんの優しさは、北半球を駆け巡るで!
 沼津まで行って、わざわざカレーを食べたくないとの考えはもとより、富士ICから引き返す手間、労力、コストなどを考えると、クジを引き当てたジョイトイ先生には、申し訳ないのですが、ここはお言葉に甘えさせてもらいたいというのが、他メンバーの総意に他なりません。
 無双祭さん、ホリコからも、ジョイトイの言葉に甘えようとの意見が出たので、僕は引き換えにある提案をすることにしました。
「じゃあさ、清水IC近くのカレー屋に行ってみよう。そこで晩飯ってことで。ジョイトイもコ〇イチのカレー以外だったら、いいわけだろ?」
「ああ、自分の行ったことのない美味いカレー屋があるなら、俺はそこで構わんよ」
 こうして僕の世紀のミスにより、企画の根幹を揺るがす事態となったのですが、みなさんの優しさにより、折衷案を提示され、許されることになったのでした。
 まだまだ美食倶楽部の旅は続くよ。 (つづく)