美食倶楽部グルメツアー(第13話)

 沼津IC〜清水ICまでは、高速道路が空いていたことから、そう時間も掛からず、およそ30分程で到着しました。
 時刻は5時半。僕は清水IC近くの某カレー屋に車を走らせました。
 が、しかし。臨時休業なのか、定休日なのか、はたまた6時開店なのかは、図りかねますが、店の扉は閉まっています。
「うわッ、やってねぇよ」
 沼津で道を間違えたことが、ケチの付け始めだったと言わんばかりに、僕らに試練が降りかかります。もうここ以外に、カレー屋に心当たりがなかった僕は、ジョイトイに告げました。
「すまないが、俺にはここ以外に紹介できるカレー屋はない。こうなったら、ジョイトイ君、君の好きな店に行こうじゃないか」
 僕の意見に、無双祭さん、ホリコとも賛成の意を表したので、僕らは固唾を飲んで、ジョイトイの発言を待ちます。もちろん、僕は彼のレパートリーにあるカレー屋との意味で、話を振ったのですが、まさかの回答がなされました。
「じゃあ、(某とんかつ屋)で」
 ええーーッ! 普通に行きたい店が、『とんかつ屋』だったら、なんでグルメツアーのクジにカレーなんて書いたの? そんなにとんかつ食いたければ、クジに『とんかつ』って書けば良かったじゃん!
 突っ込みどころ満載ですが、さすがに今回ばかりは、僕に相当の過失があるので、黙って受け容れることにしました。
「で、その(某とんかつ屋)って、どこにあるの?」
「知らない」
 いよいよ受けた恩も忘れて、僕がブチ切れます。
「お前が、どこにあるかもしれないとんかつ屋に、俺が行けるわけないでしょうよ!」
「……じゃあ、もうどこでもいい」
 車内が険悪なムードに包まれたところで、これはいかんと思った僕が、またも折衷案を出します。
「ほんじゃあさ、俺の知っているかつ屋に行ってみよう。俺が仕事先のお客さんから聞いた美味い店が、ここからそう遠くない場所にあるからさ」
 今日の話をまとめると、本当は1番に『かつ』を食いたかったけど、なぜか『カレー』とクジに書いた人が、『カレー』にありつけなかったから、『かつ』を食おうとしたけれど、自分の食べたい『かつ』が、どこにあるか知れないので、結局、第三者である僕が知っている『かつ』を食いに行くことになったって話です。
 いやー、実にややこしいですな。
 このややこしい話も次回で最終回です。 (つづく)