金沢奇行(第5話)

 兼六園をひと通り見終えた後で、入り口付近にあった土産物屋で買い物。ジョイトイ氏は様々な土産物を購入し、無双祭さんが団子を頬張る中、僕は何もせずに待機。
 協調性がない? いやいや、この後、金沢城址を見に行くのに、何かを買ったら手荷物になるし、ここで団子を食ってしまったら、万全の空腹状態で晩飯の日本海の幸にありつけぬゆえの我慢である!
 その後、先述のとおり、兼六園の正面にある金沢城址を見学。ここは確かに城跡なのですが、どちらかと言えば史跡というよりも、市民の憩いの場といった意味合いの方が強い様子。だだっ広い敷地に、当時のままの立派な石垣があり壮観な上、入場無料のため、なかなかお得なスポットと思われます。ただ無料なだけに、過度な期待は禁物とも言えるでしょう。
 金沢城址をグルリと1回りした僕らは、駐車場へと向かいつつ、道中にある数多の土産物屋を物色して歩きます。
 ここで僕は関係各所に配る土産を購入。翌日はホテル出発の後、真っ直ぐに東尋坊に向かう予定となっており、東尋坊福井県となるので、金沢に旅行へ行くと言って出て来た以上、ここで土産を揃える必要があったのです。無双祭さんがドン引きするぐらい買い物してしまいました。
 こうして関係各所への土産物を買いつけ、最後に自分自身も何か記念に買って行こうと思い、とある店を覗いて見たところ、青魚が描かれたTシャツを発見。
「ビューティホー」
 一目で気にいった僕は、さっそく購入し、ジョイトイに見せびらかせます。
「おい、見ろよ、ジョイトイ。このサバTシャツを。カッコいいだろ?」
「……なんでサバTシャツなんて、妙なTシャツを買うんだよ」
「なんだと! てめぇのアニマルTシャツに比べれば8億倍マシだっての!」
「あんだとぅ?」
「やんのか、コラッ!」
 そんな感じで、交戦状態に突入しそうな僕とジョイトイに向かって、無双祭さんが申し訳なさそうに一言。
「それ、サバじゃなくてブリだから。ほら、絵の横に漢字で『鰤』って書いてあるでしょ。サバなら魚へんに青だから」
 僕とジョイトイが凍りついたのは言うまでもありません。
 鯖と鰤の絵の違いもわからず、漢字も読めない2人の男の話は、ここで次回に続きます。 (つづく)