金沢奇行(第7話)

 ホテルを出たところで、僕と無双祭さんが、
「はてさて、どこで飯を食おうかね?」
「ここら辺で食べるか、繁華街に行って食べるかだけど……」
 などと、話をしていると、ジョイトイ先生の有り難いお話が始まりました。
「あのさ、俺、さっきまでこの辺りをブラブラしてきたんだけど、駅ビルにグルメストリートみたいのがあって、飯を食えそうな店がいくつもあったぜ」
 と、アピールを開始。
「ああ、そう。で、無双祭さん、ここら辺で食べますか、繁華街に行きましょうか?」
 などと軽く受け流したところ、その後もジョイトイ氏は、1分に6回ぐらいの割合で、自分が見てきたというグルメストリートを熱烈に推し進めてきます。いよいよ根負けした僕と無双祭さんは、じゃあ、そこでと決断。
 まったくジョイトイ先生の手柄を立てたくて仕方ない病には、困ったものですな。これで実際に美味かったら、おめぇらが美味いものを食えたのは……みたいな感じになるわけですよ。あー、嫌だ、嫌だ。
 そんな僕の思いは露知らず、自らの意見が採用されて、ジョイトイ氏は、意気揚々と先頭に立って歩き始めます。
 と、そこまでは良かったのですが、ジョイトイ先生といえば、中学校の頃、自分の生まれ育った地区ですら、平気で迷子になる剛の者。初めて来た土地で、1度行っただけの場所に上手く行けるはずがありません。
「むっ、ここではなかったか」
「駅の改札の近くだったはずだが……」
 などと言いながら、僕と無双祭さんを、色々な場所をたらい回しにしやがります。当然ながら、僕や無双祭さんから非難の声があがります。
ジョイトイ、あれだけ俺らにてめぇの見つけたグルメ街をゴリ押ししたくせに、どこにあるか分からなくなりやがったな!」
ジョイトイ君、迷ったなら迷ったと素直に言おう!」
 そんな声に、彼は謝るどころか逆ギレ。
「迷ったんじゃない! 日頃から運動不足おめぇらに食事の前の運動をさせてやったんだよ!」
 ジョイトイには罰として、サイコロを振って出た目の数×2000万の生命保険に加入して頂くことになろうかと思います。
 結局、散々連れまわされた挙句に、最初に駅ビルに入ったエントランスのすぐ近くで、彼の言っていたグルメストリートを発見。
 ジャンケンに勝った僕が、どの店にするかを決めることになったところで、次回に続きます。 (つづく)