金沢奇行(第9話)

 金沢市街より東尋坊へ向けて、南西の方向に進む僕ら。
 市街地を抜けて、バイパスに乗ると、これもまた昨日の高速ほどでないにしろ空いており、走行車線は平均80キロで、追越車線は平均100キロで、みなさま走っておられるご様子。
 なるほど、これじゃほとんど高速と変わらないから、みんな無料ゆえに、こっちを走るわけだ。高速がガラガラなのも納得いくぜ。
 などと思いながら走っていると、僕の持っているクレジットカードで割引が利くガソリンスタンドを発見したので給油することに。出発前に満タンにしておいたおかげで、たぶんここで給油しなくても、ギリギリで静岡まで帰られるかどうかぐらいの(浜松ぐらいで止まる可能性もあり)燃料もあったのですが、やはりここは安全策をとることにしました。
 北陸地方は、静岡よりも平均で10円ほどリッターあたりの単価が安く、お得感がありましたね。
 給油後もドライブは順調に続き、バイパスから県道に抜ける順路で迷うことなく走った結果、ホテルを出発してからおよそ2時間後の、午前11時。僕らは東尋坊に到着しました。
 大型駐車場に車を停車し、僕らはいよいよ東尋坊へと足を踏み入れます。切り立った崖が絶景を生み出している……のですが、高所恐怖症の僕は、それはおまけ程度の話。僕が楽しみにしていたのは、自殺抑制のために10円玉が設置されている電話ボックスです。
 どこにあるかと探してみると、観光スポットからかなり外れたところにありました、ありました。中を覗いてみる(みるなよとか言う突っ込みは、ご遠慮願います)と、確かに10円玉がセロテープで張り付けられ、警察へのヘルプラインを始めとして、命の大切さを訴えると思しきNPO法人の名刺が多数おかれていました。命を大切にしないヤツなど、大嫌いだ!
 さすがに30才にもなったので、悪戯で電話するわけにも行かず、僕らは、いやー、自殺抑制電話ボックス、ホントにあったね、などと言いながら、その場を去ることにしました。
 その後は、景勝地としての東尋坊を見学(僕はチキン野郎なので、上から眺めていただけ)したのち、駐車場に戻る途中に数多くある飲食店で昼食を取ることに。
 当然ながら、このあたりの飲食店では海鮮丼がウリなわけですが、昨日、散々に食べた上に、朝飯を食いすぎたせいで腹も空いてなかったので、軽い物で良かった僕は、天ざるとカニ味噌を注文。
 肝心なお味が、ウーン……だったところで次回に続きます。まぁ、海鮮丼を食うべきところで、そばを食ったんだから仕方ないよね。 (つづく)