デッドリードライブ 〜飯田篇〜(第6話)

 過去に類を見ない空前絶後の5週に渡るプロローグを経て、ようやく僕らの旅、当日の様子を今回からお送りすることになりました。いやはや、ここまでも長かったのですが、もう少しお付き合い下さい。
 朝8時。僕の自宅付近に迎えに来てくれた無双祭さんの車に乗り込み、旅がスタート。
 車を発進させたところで、無双祭さんが僕に訊ねます。
「ゲン君、こないだの話だと、今日はどこかに泊まりたいと言うことだったけど、実際にそうするの?」
 その点に関しては、僕も方針を決めていました。僕が車を降りたら、無双祭さんは1人で車を運転して帰らねばなりません。当初、こちらが依頼して車を出してくれた彼に対し、そんな悪魔のような所業は働けないと思い、僕は日帰りを決断したのでした。さらには飯田付近で車を降りたら、泊まるところも少なそうですし、東海道線東海道新幹線が走るエリアまで出るのに時間がかかりそうですしね。
 そんな僕の所信表明をしている間に、無双祭さんは国道1号線バイパスを西へ進んで行きます。浜松付近で結構な渋滞に見舞われ、また浜松から旧引佐地方へ向かう道でも道路工事のため、結構な渋滞に見舞われたりした結果、引佐地方に着いたのは、午前10時ぐらいのこと。
 ここで無双祭さんが学生時代にアルバイトをしていたという、某大型薬局で小休止をすることに。
 道の駅で各地の名物を摘まもうと、朝食抜きでここまでやって来た僕でしたが、いささか腹が減ったのでパンと飲料を購入。車で食べました。
 空腹は最大の調味料なる言葉がありますが、この先を含めて、この日、この時間が、1番腹が減っていた気がするので、それはそれは何とも美味いパンだった気がします。
 10時30分、休憩を終えた僕らは、再び飯田を目指して走り出します。
 引佐郡から愛知県新城市に突入。その後も各種国道・県道を通過し、いよいよ飯田市に直結する151号線にやって来ました。
 この道は、僕と無双祭さんが過去に浜松山中から飯田を目指し、もっとも過酷な旅の1つだったと言わしめた152号線を使った旅と比較すると、かなり運転が容易だったことから、凄く楽なイメージがあったのですが、それから数年後に改めてやって来てみると、普通に山道なんで、結構しんどかったですね。運転していない僕が言うのもアレですが。
 人間、ドエライ苦難にぶつかると、些細な苦難は何とも思わなくなるものですが、ぬるま湯に浸かっていると、些細な苦難ですら、大変な事に思えてくる。そんな人生の縮図が151号線と152号線にはあるのです。
 珍しく詩的なことを書いたところで、次回に続きます。 (つづく)