デッドリードライブ 〜飯田篇〜(第9話)

 『貧乏神神社』。その怪しくも魅惑的なネーミングに誘われ、静岡からはるばるやって来たにも関わらず、僕らを待ち受けていたのは、2棟の粗末な掘っ立て小屋。
「ま、まままま、まさかあれが貧乏神神社(本殿や拝殿)なのか? 冗談だろう!?」
「ゲン君、とにかく近寄ってみるしかないよ」
 僕らが掘っ立て小屋に近づくと、そこには白装束を着たうさんくさい……もとい、高貴な雰囲気のする老人がいて、僕らを呼び込みました。
「静岡からよく来なすった。まずはこちらへ」
 そうして僕らを、片方の掘っ立て小屋にある賽銭箱の前につれて行きました。
 そして老人は聞き取り辛い声で話し始めました。
 実質、3分くらい話し続けていたのですが、あまりのうさん臭さに僕の魂は、どこかへ旅立ちがちだったため、微かに覚えていることを紹介すると以下のとおり。ちなみに( )の中は、僕の魂の叫びです。
 この貧乏神神社は、パワースポットとして有名である(砂利を敷き詰めた日通のトラック置き場の上層に、パワースポットがあるとは思えぬ)。
 過去には、朝青龍大仁田厚が参拝に来たほど(両人物とも有名ではあるが、人格者じゃねぇだろ)。
 この周囲に張られた祝儀袋の数々は、かつてここに来た参拝者達が、ご利益があったとして、再度お礼参りに来た際、もって来たものである(そのわりに、どの封筒の筆跡も同じ気がするけど……爺さんが、自分で書いてないか?)。
 本当の貧乏というのは、金や物を持っていないことではなく、心が貧乏なことである。貧乏神とは、人間の心の中にある弱い部分のことである(なんか説法でよくありそうな話だのぅ)。
 とまぁ、そんな話をされて、早く終わらないかなんて思っていると、老人の口から恐ろしい言葉が発せられました。
「今から君達には、この棒でうちのご本尊(貧乏神と書かれたデカめの木)を、『貧乏神出て行け』と叫びながら3発殴りつけ、そのあともう3発蹴りを入れたのち、このマメ(節分のヤツと同じ)をぶちまけてもらう。さぁ、元気にやってくれ!」
 なんだよ、結局、つまるところ、暴れてストレス晴らせみたいなことかよ!
 あまりにも馬鹿馬鹿しい……もとい気が進まなかったので、心底にやりたくなかったのですが、違う意味で暴れて、場の雰囲気を悪くしてもいけないと思い、僕は渋々言われたことを実行しました。
 なんかスベルとわかりきっているのに、飲み会で何らかの出し物を強要されたかのような気分に僕がなったところで、次回に続きます。 (つづく)