デッドリードライブ 〜飯田篇〜(第10話)

 嫌々ながらも、貧乏神神社における儀式を行ったところで、老人の口から衝撃の一言が発せられました。
「これで君達の心に住む貧乏神はいなくなった。そこで気持ちで結構だから、この賽銭箱に寄付を頼む」
 てめぇ、最初に100円取っておいて、ここでもまた賽銭の要求かよ!
 思わず南斗水鳥拳奥義飛翔白麗(=肩まで食い込むモンゴリアンチョップ。分からない人は『北斗の拳』を読んでね)を爺さんに向かって繰り出しそうになりましたが、飯田まで来て刃傷沙汰をおこしてはいかんとここは我慢。
 爺さんも罰が悪いようで、賽銭箱から目を逸らしていたので、安価な硬貨を入れることで危機を回避しました。
 そのうちに次なる参拝者である家族連れがやって来たので、爺さんは、
「せっかく静岡から来たのだから、あちら(もう1つの掘っ立て小屋)にある様々なグッズを見て、ゆっくりして行くがいい」
 と、言い残し、そちらの対応へと向かいました。
 誰がゆっくりするか! これ以上、貴様らのところに落とす金はない!
 すっかりあたくれた僕は、さっさと駐車場へと向かいました。すると後ろにいたはずの無双祭さんが、姿を消しているではありませんか!
 もしやと思って振り返ると、彼はもう1つの掘っ立て小屋にいました。
 あ、捕まってる! ……いや、もしかしたら彼自身の意思でいったのかもしれないから、ここは急かすのは止めてトイレにでも行って時間を潰していよう。
 そんなことで時間を潰しているうちに、無双祭さんが戻って来たので、僕らは車に乗り込みました。そこで無双祭さんが口を開きました。
「いやー、ゲン君の後についていたら、おそらく爺さんの嫁と思われるグッズ売り場の婆さんに呼び止められてね。しつこく話しかけられて薦められたものだから、500円のお守りを買っちゃったよ。何か買ったその場で、念を入れるとかやられちゃってね……なんだかなぁって感じ」
 野郎ども、霊感商法みたいなことまでしやがった! 警察や公安は、この手のところは取り締まれよ!
 もはやこんなところに長居は無用。僕らは早々に車を出発させました。
 とまぁ、散々に書いて来ましたが、日本では思想の自由が認められているので、この『貧乏神神社』を崇拝する人を、 僕は否定しようとは思いません。金を取ると言っても、悪質ではないレベルなので、これで救われたと思う人は、それで良いと思いますし、これからも信仰を続けて欲しいと思います。ただ個人的には好きになれなかったので、このような書き方となってしまいましたので、念のため、そのことを付け加えておきます。ご承知おきを。
 一応のフォローを入れたところで、次回に続きます。 (つづく)