デッドリードライブ 〜飯田篇〜(第12話)

 この時間でもまだ川下りができるのか受付で訊ねたところ、およそ5分後に出発する最終便に乗船が可能とのこと。
 後で聞いた話になりますが、この便は夏休み期間中にのみ運航している増設便だったそうです。これは言い換えると、通常シーズンにおいて、この時間に到着していたら、川下りはできなかったということになるわけですから、僕らの運は良かったと言えるでしょう。
 まぁ運が良かったと言っても、貧乏神神社に行ったことを考えると、せいぜい貸借ゼロと言ったところかもしれませんがね(笑)。
 それはさておき、僕らはチケットを購入。大人1人2900円と結構なお値段でしたが、期待が大きかったので、そんなにぼられた気にはなりませんでした。
 チケット購入後、出発まであと5分もなかったので、僕らは早足で乗船場に行きました。
 乗船場には、僕らの他に客と思しきはカップル1組のみ。
 ……むぅ。かたやカップルで、こっちは男2人とは何とも居心地が悪いのぅ。
 若干の切なさを感じるわけですが、そんなものに負ける僕らではないので、構わずに乗船。
 舟には客とは別に船頭さんが2人と、案内役のおばちゃんが1人、スタッフとして乗船したため、計7名を乗せて舟は川に漕ぎ出でたわけです。
 川下りは、秘境とも言える大自然の中を進んでいく爽快感に加え、真夏にも関わらず涼を感じることができて、たいへん素晴らしいものだったと思います。案内係の方の説明も丁寧で好感が持て、まさに貧乏神神社で地の底に落とされたこの日の旅を、救ってくれたと言っても過言ではないほどの高クオリティでした。2900円の価格設定も、これなら支払う価値が十分にあると思います。
 ……と、普通ならこれでめでたしめでたしとなるのですが、天竜川で川下りをした以上、触れなければならないことがあります。
 時間軸は前後しますが、僕らが川下りをしたおよそ1週間後。同じ天竜川で、川下り中の船が転覆し5名の方が亡くなる事故が起きました。僕らが楽しんだのは長野県内の川下りで、事故が起きたのは静岡県内のもので、会社も別だと思いますが、内容は似たものだと思います。
 自分が乗ったときに事故が起こらなくて良かったと思う一方で、僕らが乗ったときにも救命胴衣を着用するような指示はありませんでしたので、万が一にも事故が起こったときには、7名のうち数名はお陀仏の可能性があったと思いうと、今でも背筋が冷たくなります。川下りは大変楽しいものであったので、ぜひとも安全面を見直した上で、今後も続けて欲しいと思います。
 珍しく真面目なことを書いたところで、次回に続きます。 (つづく)