埼玉遠征(第2話)

 行き先を検討した結果、無双祭さんは言いました。
「埼玉には、忍城(おしじょう)址があるはずだから、あっしはそこに行ければいいかな」
 ちなみに忍城というのは北條氏の城で、1590年に豊臣秀吉が天下統一のために行った最後の戦である北條攻めにおいて、小田原の本丸が降伏するまで、わずか2千人の兵士で、豊臣軍2万の猛攻を防いだ堅牢な城として有名です。その際に、かの石田三成が水攻めをして、失敗したことでも広く知られておりますかね。
 とまぁ、戦国時代に興味のない人のあくびが聞こえてきたので、うんちくはこの辺で。
 無論、自分の行きたいところばかり推し進め、無双祭さんの行きたいところにNGを出す道理はないので、忍城も行程に含むことにしました。
 無双祭さんとの話を終えて、帰宅後に地図やらネットで調べたところ、忍城があるのは埼玉県の行田市というところで、川越とはさして離れていない様子。これなら一般道で十分に行けるでしょう。
 当日の移動方法に目安が着いたところで、僕はある男に声をかけることにしました。
 その男は新メンバー……ってな話なら、さぞかし当ブログも盛り上がるのでしょうが、歴史にそこそこ興味がある上に、休みが合う人材など、そうそうスカウトできないので、当然ながら声をかける男は、ハルロー・オブ・ジョイトイということになります。
 前回の『デッドリー・ドライブ飯田』では、悪魔のような所業を働き、僕らの旅に無茶苦茶な難癖を付けドタキャンをした挙句、1人で北海道に飛び、なんだかよくわからない旅をして来た彼ですが、やはり2人よりは3人の方が(経費が浮いて)いいので(笑)、声をかけることにしたのです。もはや罪人と言っても過言ではない彼に、再び救いの手を差し伸べるとは、まったく僕の心は慈愛で満ちていると言わざるを得ません。
 しかしながら、誘うにあたって気がかりなことも。実はジョイトイ、ここ数ヵ月、朝の8時半に出勤させられ、ほぼ毎日深夜まで働かされた挙句、週に1日しか休みがない過酷な労働条件下で働いていたので、もしやすると仕事で欠席との回答も高いのではないかと思っていたのです。そこでダメもとで誘ってみたところ、ちょうど仕事に区切りが着いたので参加するとの回答でした。いやぁ、これで交通費を3等分できて良かった、良かった(そこか!)。
 こうしてゲン、無双祭、ジョイトイのおなじみ3人組で、埼玉を目指すことになったのでした。 (つづく)