地獄少年(第4話)

 諸般の事情により、先週とは異なるバーに足を踏み入れた僕ら。
ちなみにこのバーも、例の某友人が教えてくれた店で、男2人で入るには、ちょっと洒落過ぎて落ち着かないぐらい、雰囲気のある店です。何度か通ったのですが、マスターも気さくで、酒も美味く、良い店と言えるでしょう。
 1杯目は、僕がラムベースの強い酒(名前を忘れた)を、ジョイトイがブラックルシアンを飲みました。続けて2杯目。僕がラムベースの甘い酒(また名前を忘れた)を頼んだところで、ジョイトイから意外な言葉が出ました。
「俺は2杯目、ビールにする」
 なぜこういう店に来てまでビールを?
 正直、そう思ったのですが、まぁ余計なことを言って、ジョイトイの機嫌を損ねることもなかろうと、僕が黙って事態を見ていると、マスターからジョイトイに提案がなされました。
「うちのビールは、エビスか地ビールのどちらかになるんですけど、今日はちょっと珍しいビールがあるので、そちらを見てみませんか?」
「ああ、じゃあ」
 と、ジョイトイはマスターの提案を受け入れました。
 マスターが取り出して来たのは、様々なフルーツを醸造されて作られたビールでした。
 へぇ、そんなビールがあるんだ。俺も1度、飲んでみてぇな。
 そんなことを思う僕の傍らで、ジョイトイも同じことを思ったのでしょう。
 彼は各種フルーツビールの中から、ブルーベリーのビールを注文しました。
 こうして僕らは2杯目を飲み始めました。ちなみに1口もらったのですが、ブルーベリーのビールは、ブルーベリーの匂いで味がビールといった代物でした。変り種として、これはこれで良いけれども、普通のビールの方が落ち着くというのが、僕の感想ですかね。
 何はともあれ、2杯目を終えたところで、僕らは店を出ることで合意しました。先週飲み過ぎたこともあり、この日は最初から酒は2杯までにすると僕は決めていて、その旨をジョイトイにもあらかじめ伝えておいたので、彼もスンナリ賛同してくれたものと思われます。
 そればかりか、ジョイトイの口から僕を労わる言葉が発せられました。
「今回は、俺が無理を言って、ゲンさんには2週連続で同じ企画をさせちまったからな。だからここは1杯分、俺がおごらせてもらうぜ」
 1杯分じゃなくて、全オゴリでもいいのに……否ッ! ヤツにおごってもらったら、この日、奢った旨を一生覚えていて、幾つになっても、そのことをネチネチと言うはず! 全おごられは避けねばならぬ!
 僕の心の声と供に、次回、物語は急展開を向かえます。 (つづく)