魁! 無双祭塾!(第5話)

 北陸自動車道を軽快に走る僕でしたが、あるとき後方にサイレンをまわしたパトカーが近づいて来たことに気が付きました。
 それなりのスピードで走っていて、身に覚えがありまくりの僕は、お縄を覚悟しました。
「あー、こいつはやられたッ! まさか新潟まで来て、お縄を頂戴するとは思わなんだですわ!」
 すっかり意気消沈し、覚悟を決めてスピードを落としてみると……おや? パトカーは追い越し車線から普通に追い越して行くではありませんか。
「この先でスピードを落として、ワシを捕まえるつもりっすかね?」
 脅える僕に、無双祭さんが言います。
「でもスピード違反で捕まえるなら、普通、横に並んだときに、『この先で止まりなさい』って言うと思うから……セーフだったんじゃないの?」
 無双祭さんの言葉どおり、その先で警察が僕を待ち構えていることはありませんでした。
 つまり僕は無罪放免というわけです。
 やったぜ! 新潟県警万歳ッ! 
 よくよく考えてみれば、白バイや覆面パトではないので、ただ現場に急行するべく高速道路を使ったパトカーだったのでしょうが、このときはそんなことまで気が回りませんでしたね。
安堵の気持ちと共に、ドッと心労が溜まった気がしました。
 それでも気を取り直して高速道路を走っていくと、間もなく親不知ICへ到着。高速を降りて一般道へ移りました。
 パッと見、親不知子不知のような地形が、どこに該当するのかわからなかったので、近くにあった道の駅『親不知ピアパーク』へ情報収集がてら立ち寄ることにしました。
 11時30分。駐車場に車を停めた僕らは、親不知子不知について書かれた掲示板があったので、それを読むことにしました。
 書いてあったことを要約すると、下記のとおり。
 この辺りの海岸線沿いの15キロを親不知子不知と言う。その謂われは、源平の時代まで遡る。源氏に都を追われた平氏の姫が子供を連れて、ここに差し掛かった際、あまりの難所であるため、自分のことだけで精一杯となり、子供から目を離したところ、子供は波にさらわれてしまったことから、その名が付けられたという。
 この説明を読んだ僕の顔は、おそらく真っ青だったことでしょう。
 なぜそうなったかは、次週、ご説明します。 (つづく)