西愛知奇行(第4話)
昼飯決定ジャンケンに勝利したジョイトイ。
この男が決断を下したのは、如何にも彼好みのキレイな熟女が店頭で客引きをしていた鰻屋。
う、鰻屋か……。
僕は顔を強張らせました。
それというのも、鰻は好きなのですが、近年の鰻の高騰もあり、お値段が相当良かったからに他なりません。その気で来ていればともかく、いきなり2000円付近の昼飯を食おうと言われたら、ちょいとキツイっすよ。
ジョイトイが選んだ鰻屋の対面では、お婆さんが同様に客寄せをしている食堂があり、そちらのサンプルにはお手ごろ価格のそばがあったので、そっちを選ばないかと心の中で思っていたのですが、やっぱお婆さんとキレイ系熟女では、ゲス野郎のジョイトイの前では勝負にはならなかったようです。別にキレイな熟女と、どうにかなれるわけでもないのにね。ホント、ゲスな野郎ですよ、ジョイトイは。
とはいえ、じゃんけんに勝った者に絶対従うルールであるため、暴れるわけにもいきません。
僕は鰻以外のメニューもあることを期待して、店内に入店しました。
そして僕の期待は脆くも崩れ去ったのです。
鰻以外のメニューは、きし麺しかない(そして僕はきし麺は好きではない)本格的な鰻屋さんだったってわけです。
こうなったら、嫌いなきし麺を食べるよりは鰻を食べよう。
腹をくくって、僕は2000円を越える鰻を注文。
これで以前に浜松の竜ヶ岩洞近くで食べた鰻屋の如く、数分で出てきて(=冷凍鰻を使っている)、値段にそぐわない不味さだった日には、ジョイトイの処分を検討せざるを得ないわけですが、しばらくして出てきた鰻は絶品!
さらには僕らが食べ始めたのちにやって来た客は、満席のため入店を断られている始末。時刻はまだ12時30分頃だったのですが、鰻を捌くところから始めると、今いる客に鰻を出し終わるぐらいには、昼食らしい時刻を終えてしまうとの判断からでしょう。
そこまで気合の入った店なので、美味かったのも十分に頷ける話です。一緒に注文した田楽も美味でした。
ここまで美味い鰻は、そうそう食べられないと満足する気持ちと、昼飯で2000円を超えた背徳感の2つをかかえて、僕は店を出ました。
こうして昼食を済ませたところで、長篠では土産物も売っていないだろうから(失礼)、ここで買い物を済ませていこうとの話になり、僕らはひとたび解散し、各々買い物へと向かいました。 (つづく)