西愛知奇行(第5話)

 土産物を物色するべく、買い物に出かけた僕の目に入って来たのは、狐のお面。
 なるほど、豊川稲荷で狐を祭っているから、こういったグッズがあるのか。
 納得した僕は、なんだか無性に欲しくなり、お面を衝動買い。
 後日談ですが、当初は家の玄関に飾ってあった狐のお面ですが、とある方から著しく景観を乱しているとの強い指摘および苦情を受け付け、今では自室のパソコンの上に安置されております。南無ゥ。
 こうなったら、夜な夜なこのお面でもかぶって辻斬りを繰り返すしかなさそうですな。……まぁしないけど。
 それはさておき、おのおの土産を買った僕らは、それとなく集合。
 いよいよ長篠に向かうべく、駐車場に戻っている最中のことです。
 無双祭さんから、こんな提案がなされました。
「せっかくここまで来たんだから、伊良湖岬へ行ってから長篠に行かない?」
 彼の言葉は、僕の心を揺さぶりました。
 過去2回、伊良湖岬へ行ったことがあるのですが、2度とも到着したの夜であったため、名物の『大アサリ』を食いそびれていたのです。
今日こそ、大アサリを口にするチャンス!
 ここからなら、さほど時間もかからず伊良湖岬に到着すると思った僕は、ジョイトイの許可もとり、無双祭さんの意見を採用することにしました。
 この決断が大きな間違いであったことは、豊川稲荷を出発して、しばらく経ってから判明しました。豊橋市街が渋滞していたことに加え、豊川稲荷から伊良湖岬までの距離が思いの外あったので、到着までに相当の時間がかかったのです。
 結局、伊良湖岬へ到着したのは、田舎道を走り続けた、午後3時過ぎ。ここを観光して長篠へ行ったとしたら、そこにはただただ暗い草原があるだけと思い、この際、長篠は切り捨てて、伊良湖岬をゆっくり見学することに。
 『大アサリ』の誘惑に負けて、当初の目的である『長篠』に行かないのは、如何なものかと思いますが、人生には大切なもの(大アサリ)を得るために、別の大切なもの(長篠観光)を諦めなければならないこともあるんです。
 まぁ長篠には、またみんなで行けばいいさ。
 そんなことを思いつつ、僕は車を降りました。
 男3人で海を眺める僕ら。
 なんだ、このシュールな絵は!?
 葛藤しつつも、沿岸の散歩コースを僕らは歩き出しました。 (つづく)