怨足(第4話)

 ホリコが腕に重りを巻かれることを知らずに、企画へと参加した理由。
 その理由というのは、ホリコの勤務形態にあると言えるでしょう。ホリコは過酷な労働にさらされており、帰宅するのが深夜になることも、たびたびあります。
 そんなわけで、ホリコと連絡を取るには、ホリコが時間に都合の着くときにやり取りができるメールで行うことが多いのですが、僕がメールを打つときに、長文だとホリコも煩わしいだろうと考えた末、『ジャンケンで勝ち残った人の手には、重りが付けられる』の一文を入れ忘れてしまったんですね。
 その結果、ホリコは歩いて行くことは知っていたものの、手に重りが巻かれる可能性があることを知らなかったってわけですね。
 いやはや、何とも悲しいすれ違いの起こした事件でした(ただのお前の連絡ミスじゃないかとの突っ込みは、ご遠慮下さい)。
 何はともあれ、10時過ぎ。めでたく(?)僕の腕に巻かれた重りは外され、ホリコの腕に巻かれることになったのです。
「いやぁ、家を出発してから1時間半強、ようやく重りから解放されたぜ! 今だったら、ものすげぇ高速パンチが打てそうだぜぇッ!」
 一躍ハイテンションになった僕でしたが、尻の痛みは相変わらずで、尻を引きずりながら、再び4人の仲間と再び歩き始めました。
 清水市民病院前から南にしばらく進んだところで、いよいよ海岸通りに出ました。
 ここからが遠いんだよなぁ。
 などと、考えながら海岸線を西に向かって歩いて行くと、前からバスから降りたのであろう観光客の大群が向かって来るではありませんか。
 こんな辺ぴなところ(失礼)に、観光も何もないだろうに?
 そう思ったのですが、それが過ちであることに、僕はすぐ気づきました。この時期の久能海岸沿いでは、イチゴ狩りが行われており、観光客でごった返すのです。
 すれ違うのも困難な狭い歩道で、正面からやってくる人の大群。これまたすれ違うの大変な狭い車道から、すれ違いのため歩道ギリギリまで寄せて来る車。歩く者にとって、結構劣悪な環境が、ここから駿府夢広場に着くまで、ずっと続くことになりました。
 いやー、こんなときにまで、腕に重りが巻かれていたら、発狂寸前でしたよ。
 ……ホリコ、すまん。
 いよいよウォーキングも佳境に差し掛かったところで、次回に続きます。 (つづく)