美食倶楽部最大トーナメント(第46話)

 エビフライは、ゲオルグのブログに目をやった。
 そこには、目の前にいる当人からは想像ができないほどの巧みな絵文字が織り込まれた文章が書き綴られていた。内容は仕事のこと、家庭のこと、遊びのことなど、多岐に渡っている。しかしながら、口にした牛乳を吹き出すほどのインパクトがある内容には思えなかった。
 ふーん、普通のブログとしてみれば、まぁまぁ面白いのだろうけど、思わず笑ってしまうほどの内容ではないな。
 読み始めたときこそ、そんな風に思ったエビフライであっだが、読み進めていくうちに、とあることに気が付いた。どの更新時にも、決まってアイドルの写真が添付されているのだ。まったく内容とは関係なく、しかも脈絡もないのだが、決まって文末に、『今日は〇〇ちゃんで!』などと書かれており、その人物と思しきアイドルの画像が掲載されているのである。毎回毎回欠かさずに、である。
 なぜだ、なぜ突然アイドルを登場させる必要がある!?
 懸命に考えた結果、エビフライは、ゲオルグの意図にうっすらと気付いた。
 掲載されているのは、ゲオルグが好意を寄せていると思しきアイドル達。彼女達を愛しているからこそ、多くの人に彼女達の良さを知ってもらうため、自身のブログを華やかにするため、登場させているのだろう。それが当然の理由なのだから、文章の内容に関係あろうがなかろうが、脈絡があろうがなかろうが、そんなの関係ねぇ(懐かしい)のである。
 意味がわからないヤツは、てめぇで勝手に考えろと言わんばかりの凶暴性。
 この男、面白過ぎる!
 エビフライは察した。ゲオルグという男は、とんでもない怪物であり、自分の手に負える男ではないと。
 自分の敗北は、お笑い界全体の敗北。わかっている。だが、その事実を受け容れることしかできない現状もわかっている。
 エビフライは天を仰いだ。涙が一滴こぼれた。ほぼ同時に、口脇から牛乳がこぼれ出た。
「勝負ありッ!」
 山本山の声が掛かった。
 エビフライは、残りの牛乳を吐き捨てると、うつむいたまま控え室を目指した。
「あんな怪物。だーれも勝てやしねぇよ」
 こうして決勝で戦う2名が決まったのである。
セミファイナル第2試合 〇ゲオルグ(アイドル写真掲載)エビフライ●