美食倶楽部最大トーナメント(第47話)

 明けましておめでとうございます。
 本年につきましても、隔週程度のペースでゆっくりと更新していけたらと思っておりますので、気が向いたときに見て下されば幸いです。当面、美食倶楽部最大トーナメントを書き続けていき、完結後に新作をお送りしたいと思いますので、どうぞお楽しみに。


 最初の試合が始まった午後3時から、数えること14試合、7時間が経過しようとしていた。午後10時。決勝が長引けば、いよいよ終電が危ない時間である。
 しかし、観客で帰路に着いた者は、誰一人としていなかった。誰もが自分の目で確かめたかったのである。選りすぐられた16名の選手の中で、1番おもしろい者が誰なのかを。優勝するのがジョイトイなのか、ゲオルグなのかを。
 ハルロー・オブ・ジョイトイ。美食倶楽部の重鎮で、天然核弾頭と呼ばれる男。1回戦にて萩木欽一を、2回戦にて獣神サクライガーを、準決勝でゲンを、それぞれ1回の攻撃で仕留めて、圧倒的な強さで勝ちあがって来た。
 対するはゲオルグ。ゲオルグ一門の総裁。彼もまた1回戦でNOVを、2回戦でホリコを、準決勝でエビフライを、それぞれ1回の攻撃で仕留めてきた。
 空前絶後の美食倶楽部最大トーナメントを制するのは、いったいどちらなのであろうか。
 こんな逸話がある。1980年代の甲子園を沸かせたPL学園のKKコンビ、桑田と清原。その後、プロ野球でも大いに活躍した、言わずと知れた大投手と大打者である。両者は高校入学まではどちらも投手であり、高校でも投手しようと考えたが、最初に桑田の投球練習を見た瞬間、清原は野手転向を決めたという。
 それはなぜか。桑田の投球を一目見た瞬間、あまりに次元が違い、この男と競っても自分が投手としての出番は巡って来ないと悟ったからなのだとか。
 この世には、時として後天性の努力では補えない程、天賦の才に恵まれた者がいる。
 決勝まで対戦相手をものともせず勝ち上がってきたジョイトイとゲオルグ。2人はまさに同世代に生まれた笑いの天才と言えるだろう。
 その2人が今から戦おうと言うのだから、観客のボルテージが上がらないわけがない。準決勝後にとられた休憩が終わり、これから決勝戦が行われるとのアナウンスが武道館に流れたとき、会場の盛り上がりは最高潮となった。
 場内の照明が暗転し、ジョイトイとゲオルグが、それぞれのテーマに乗って入場を行う。両者がリング上で対峙した。
 美食倶楽部最大トーナメントの決勝が、今まさにその火蓋を切って落とそうとしていた。
(つづく)