美食倶楽部最大トーナメント(第49話)
ゲオルグのブログの内容に日本武道館は爆笑に包まれた。
それもそのはず。そこには、『暑いニャン』とのタイトルが銘打たれて、自宅敷地内でよく見かける猫が、暑さのため仰向けになり油断仕切っている写真が掲載されていたのである。
写真自体もコミカルで面白いものなのだが、なにせ30才を過ぎたおっさんが『暑いニャン』などと、何とも可愛らしいタイトルを付けてブログを公開しているのが、何を差し置いて面白いのである。
天然と言われて久しいジョイトイも、この珍妙さには可笑しさを感じずには入られなかった。
お、面白過ぎるッ! 余裕で決勝まで進んで来るわけだッ!
限界点ぎりぎりのところで、何とか堪えてこそいるが、しばらくの間、牛乳を吐き出さずに笑いを我慢するのは不可能に思えた。
俺の敗北は美食倶楽部の敗北! 負けたくない! だがこんなに面白いもんを出された日には……。
臨界点を迎えたとき、彼の意識は遠のいていった。
そのときである。どこからともなく美食倶楽部メンバーの声が、次々と聞こえてきたのは。聴覚ではなく、脳に直接語りかけられるような不思議な感覚であった(ここから先はファイナルファンタジーⅣのラスボス前をイメージしてお読み下さい。わからなくても、特に問題はありませんが)。
ラフィートの声。
「ジョイトイさん、負けないで下さいッ!」
無双祭の声。
「負けるな、君はこんなところで終わる男じゃないだろう」
クロの声。
「立ち上がりなよ。美食倶楽部の笑いのエースなんだからさ」
ホリコの声。
「勝ってさ、みんなで美味い酒を飲もうよ」
トシの声。
「もし負けてみろ。今度、徹夜のゲームに付き合わせるぞ」
ダミアンの声。
「さっさと、そんな野郎、叩きのめせ! このイ○ポ野郎ッ! ……ポッキー食べるかい?」
NOVの声。
「ジョイちゃん! 本気出して、さっさとゲオルグをやっちゃいなよ!」
キクチの声。
「おい、こら、ジョイ! もし負けてみろやッ! 指の2〜3本や済まん話やぞッ!」
ゲンの声。
「てめぇ、キクチに勝った俺に破って決勝に行ってるんだぜ。その意味をよく考えるんだな。これからはお前の時代だ。ゲオルグを倒して、見事、美食倶楽部の名を守ってみせよ!」
中には恐喝じみた言葉も多かったが、どのメンバーの言葉にも激励の意図が込められているのがわかった。
ゲオルグッ、負けるわけには、いかないッ!
美食倶楽部メンバーの願いが、ジョイトイに耐える力を与えた。(つづく)