美食倶楽部歌下手王決定戦(第8話)

 カラオケルームに戻り、いよいよ決戦開始です。
 2度と再びカラオケに行きたいなどとほざけぬよう、そのはらわたを食らい尽くしてやるわッ!
 先攻のジョイトイが、まずはアニメ北斗の拳の2代目のオープニングテーマである『サイレントサバイバー』を歌います。
 最近はカラオケ機材も相当にグレードアップしているようで、精密採点なんて項目がありまして、テレビの歌番組等でよく見かける音程の合っている合っていないを示すグラフが画面に表示されるばかりか、ビブラート、しゃくりなどを加味して採点する機能が、我々一般人でも使えるそうで、そちらを利用することにしました。
 画面に表示されるグラフを見ていると、ジョイトイは頻繁に音程を外している模様。
 グフフフフ、雑魚め! これで歌が上手いと思っているなど、ちゃんちゃら可笑しくてヘソで茶を沸かすわい!
 歌い終えたところで、機械が採点を始めます。結果、86.328点。
 なんちゅー甘々の採点じゃ。あの程度の歌唱力で、それだけ出るなら、俺様が歌った日には、余裕で90点越えじゃのぅ。
 などと、余裕をぶっこきながら、いよいよ久方ぶりに僕がマイクを握ります。
 相変わらずカラオケのストレスを半端なく感じながらも、それに耐えながら歌うと、ジョイトイよりもかなりの音程が合っている気がします。
 こりゃ、勝負は決したようなものだ。
 ふんぞり返りながら採点を待った結果、表示されたのは、80.856点。
 なんじゃ、こりゃおぇッ!
 茫然とする僕の傍らで、ジョイトイ笑点の好楽ばりのどや顔をしていたのは言うまでもありません。
 おいおい、機械が壊れてるんじゃねぇのか!
 動揺しつつも、僕は自身に必死に言い聞かせます。
 いや、まだ始まったばかりだ。音程に優れている俺が、この音程外しクソ野郎(ジョイトイのこと)に負けるわけがないッ! こういうときこそ平常心。自分のスタイルを崩すことはない。
 こうして2曲目の課題曲、アン・ルイスの『ああ、無情』に突入したものの、結果は曲名どおりなのか、無情にもジョイトイ87.044点、ゲン84.636点との結果。
由々しき事態じゃぁッ!
 いよいよ青ざめる僕。果たして逆転なるか? (つづく)