美食倶楽部の怪談ナイト(最終話)

 すると、闇の中からJの声が聞こえてきたんです。
「まだ夜中だから寝てていいよ」
 って。
 このときの私、まだ多少寝ぼけていたんでしょうね。
 なんだJか。不審者じゃなくて良かった。何か荷物の中から物を取り出そうとしていたけれども、明かりを点けて、俺達を起こしてしまったら、申し訳ないと思って、暗がりで懸命に探していたんだろう。
 と、それ以上は特に何も考えず、安心したせいか、再び眠ってしまったんです。
 そして翌朝。目覚めて、昨晩の出来事を思い出したときに、改めて考えたんですよ。
 彼はあんな真夜中に何を探していたんだろうと?
 夜中に急に入用なものと考えると、薬かそれに近いものと思ったんですね。
 体の調子でも悪くなって、家から持参してきた薬でも探していたんだろうか? だとしたら、そのまま眠ってしまって悪かったな。
 そう思って、彼に訊いたんです。
「昨日の夜、しばらく探し物をしていたみたいだったけど、大丈夫だったのか?」
「ああ、実は夜中に腹が減ってさ。何か食べ物はないかと思ったんだが、よく考えたら結婚式でチロルチョコをもらっただろ(帰り際に新郎新婦が手渡しでくれるお菓子がチロルチョコだった)? あれを探してたんだよ」
 夜中に腹が減って、お菓子を食うために煩わしい音を随分と長い時間、立てていたって言うんですよ。
 普通、夜中の2時、3時に腹が減るってこと、あります?
 あったにしろ、チョコレートを食おうと思います?
 さらには、それを探そうと思って、仲間が寝ているところで、ガサガサと長い時間、音を立てること行為、どう思います?
 そのあまりに非常識な行動に、私がブチ切れたのは言うまでもありません。
「……てめぇは、何を考えてるんだッ! ジョイトイッ!」
 帰りの車内は、終始気まずい空気に包まれていたらしいですよ。 (美食倶楽部の怪談ナイト 完)


注釈:全て私の想像になりますが、宿泊施設に入ったとき、嫌な雰囲気だったのは、どうもこの格安ホテルが、昔は企業の研修施設で、造りが自分の職場の研修施設に似ていたからだったと思います。


 Cast


ゲン(私)
ジョイトイ(J)
ホリコ(H)*友情出演


スタッフ


文章:ゲン
シリーズ構成:ゲン
テーマソング:『怪談爺ぃの唄』*YouTubeで検索すれば出るよ。
企画:美食倶楽部
制作総指揮:ゲン

* ネタ切れのため、しばらく更新をお休みします。
  新企画を行っていないことから、再開時期は不明です。
  今のところ新企画の予定もないので、何とも言えないのですが、何かやりたいことが見つかって、企画を終えたらブログを再開する予定です。
  たまに更新されているか否か、確認に来てもらえれば幸いです。