キクチクエストⅡ(第4話)

 無意識のうちに、嫁と通話していた恐怖に怯えながらも、僕はNOVさんとホリコに続いて車を降りて休憩を取ります。
 ここまで来たところで、だいぶ体調が回復してきました。
 周囲に散々迷惑をかけましたが、何よりキクチの奥さんの手料理を食べられるぐらいに回復した体調に安堵しました。
 いや、マジで。食べられなかったら、今後キクチ家に出禁は間違いないもんね。
 休憩を終えた僕らは、狭山SAを出発しました。その後、ドライブは快適に進み、東松山ICで高速道路を降りて、一般道で群馬にあるキクチ宅を目指します。
 そこそこの距離があったため、埼玉から群馬につづく街道の風景を眺めながら進みます。
 関東平野と呼ばれるだけあって、どこまでもだだっ広いのぅ。
 見たこともないファミレスがあるのぅ。行ってみたいのぅ。
 そんなことを考えながら、1時間程北上したところで、いよいよキクチの住宅付近に到着。
 案の定、独力では見つけられなかったので、キクチに電話で救助を要請。
 電話している場所を報告したところ、
「おぅ、そこじゃちっと行き過ぎだから、今から迎えに行くぜ」
 と言ってから間もなく、キクチが現れ僕らを自宅へと導いてくれました。
 お宅に到着して、まずは敷地を拝見。
「こっちは土地が安いからさぁ」
 などと、本人は謙遜していましたが、車を4台置ける駐車場とは別に広い庭もあります。凄ぇな。
 さらには誰もが知る一流メーカーで建築した自宅に上がらせてもらい、室内を拝見。さすがの造りです。
 1周したところで、キクチの奥さんが料理を用意してくれたので、みんなで食事。
 絵に描いたような楽しい時間だったことは言うまでもありません。
 およそ10年前、正月の諏訪大社で、
「俺、ダメダメっ諏訪ァァ!」
 と、絶望していた青年は、立派に成長したのであります。
 リア充嫌いが見たら、発狂しそうな幸せ家族を尻目に次回に続きます。(つづく)

キクチクエストⅡ(第3話)

 車が停まった感覚に目を覚ますと、そこは東名清水ICから程ないところにある富士川SA。
 ちゃんとした新築祝い(笑)は僕があらかじめ用意しておくので、静岡色満載のオモシロ手土産は当日の朝、富士川SAもしくは併設された富士川楽座で購入しようと、事前に打ち合わせておいたので、それに基づきホリコが立ち寄ってくれたものと察しました。
 しかし、このときの僕は二日酔いによる体調悪がMAX状態。オモシロ土産を探すどころか、なにはさておきソルマックを探す始末。最低です。
 ところが、というべきか当然というべきか、SAや道の駅って、酔い止めや眠気覚ましはあるけれど、二日酔いの薬は置いてないんですよね。飲酒運転で来てもらっちゃ困るからか、はたまた需要がほぼないからなのかは知らないけれど。
 圧倒的絶望!
 打ちひしがれて思考能力を失った僕は、土産の選定をほぼ2人に丸投げし、ミネラルウォーターを自販機で購入し、車に戻りました。
 後部座席に座った途端、すぐに意識が遠のきました。
 自分で書いていてアレだけど、本当に酷い人間であると、自覚しております。
 次に意識が戻ったのは、埼玉県の狭山PA。時刻は10時30分頃。富士川SAを出発したのが、8時30分頃だったので、およそ2時間、意識が遠のいていたことになります。
 その間、友人らに聞いた話によると、
「なんか電話に出て、すっごい敬語で話してたよ」
 と、言うことなのですが、まったく記憶にありません。
 マジでか? なんか怖いなぁー。嫌だなー、嫌だなー。
 恐る恐る携帯の履歴を確認すると、確かに嫁からの着信があり、数十秒通話している模様。
 イヤァァァッッ!
 再び『美食倶楽部の怪談ナイト』っぽくなったところで、次回に続きます。(つづく)

キクチクエストⅡ(第2話)

 意外なところから忍び寄る魔の手。そいつの名は……歓送迎会。
 1月に計画を立てたときには、すっかり頭から抜けていたのですが、群馬遠征の前日4月21日(金)にブチ込まれたのです。
 半分、仕事みたいなものなので、当然ながら欠席するわけにもいかず、今回の僕は転出組となるので、お世話になった方々に礼を欠くこともできません。あれよあれよという間に3次会まで行き、ビール、ジン、ハイボール、焼酎を次々と飲み干しました。
 いい気分でタク送にて自宅に帰り、床に着いたのは、午前2時。
 翌日の起床予定時間は6時。
 ふむ、酒は抜けないだろうけど、運転担当じゃないから、車内でゆっくりすればいいや!
 ねぇさん、そんなゲスの極まった感のする僕には、当然ながらバチが当たるわけで……。
 翌朝。僕は猛烈な二日酔いで目を覚ましました。
起き上がるのも大変な上に、気持ち悪い。すぐにお水を持ってトイレに籠る始末。
 こんな体調じゃ、とても遠征は無理……。
 完全に心が折れかけましたが、こっちから言い出した企画で、昼飯まで用意して待っているキクチや、休日の朝から群馬に行く気満々で準備するNOVさんとホリコを裏切るわけにはいきません。
 ていうか、自己管理ができない結果、ここでドタキャンしたら、俺はクズだよッ!
 経験則から、この体調の悪さは午前中には落ち着くはず!  きっと昼飯は美味しく食べられるはず!
 僕は気合を入れ直し、再び支度を進めます。体調に不安を抱えながらも、準備を整えた僕は、7時半頃、迎えにきてくれたホリコの車に乗り込みました。
 そして車に乗った途端、僕の意識はぶっ飛ぶのでした。(つづく)

キクチクエストⅡ(第1話)

 高校卒業と同時に静岡を去り、遠い群馬の地で就職、結婚したキクチから、『家を建てることになった』とのめでたい連絡があったのは、今から1年半程前(平成27年秋)のことでした。
 こいつは完成したら1度訪問して、生きている大きめの哺乳類でも新居に放してやらなくては(笑)!
 そう思いつつも、日常に追われている間に1年が経過。
 新築が新築でなくなってしまう前に行っとかないとまずい!
 痛切に感じた僕は、いよいよ必死で動き始めます。
 まずは同行するメンバーへの声掛け。
 諸般の事情を鑑みた結果、NOVさん、ホリコ、そして筆者ことゲンの3名で訪問するのが最善と判断しました。
 なぜって? それは大人の事情があるからさ。
 なにはともあれ、正月明けに計画を練るとの口実で、居酒屋で飲みつつ3人で話し合いをもった結果、4月22日(土)に全員都合が良い見込み。
 そこで改めてキクチにお伺いを立て、了承を得て、ようやく企画が実現することになりました。
 さらに計画を詰める中で、昼前後に到着する旨を報告すると、キクチから何とも嬉しい申し出が。
『うちで飯を食っていけ』
 なんと言うことでしょう! 10年前に訪問した際には、わざわざ静岡から訪問した僕らに対し、
「俺、今日の夜、飲み会入れちゃったから、おめぇらもう帰って」
 と、平然とのたまわった彼も、随分と丸くなったものです。
 あれ、なんでだろう? 涙が止まらないよッ!
 あとは誰かに突発の仕事でも入らない限り、問題はないだろうと思っていた矢先、意外なところから計画に綻びをきたす魔の手が忍びよってきたのでした。
(つづく)

私の愛したカピバラ(最終話)

 念願のカピバラの餌を購入し、嫁に写真の準備を促していると、何やら手に持った青草が引っ張られる気配。
 えっ、なになに?
 何事かと思い、手の方をみると、なんと目ざといカピバラさんが、既に俺の手に握られた青草を見つけ、喰らっているではありませんか!
「おい、餌がなくなる! ていうか、カピバラ食うの早ぇ! 急いでくれ!」
 嫁に哀願するも、慣れない僕のスマホの操作に手間取るうちに、既に青草は消滅していました。
 これではベストショットが残せないではないかッ!
 僕は泣く泣く2束目の青草を購入しました。
 ……これで400円か。入園のときの割引が、これでほとんどパァだ。トホホホ。
 ベストショットは取れたものの、若干の疲労感を身にまとい、僕は『カピバラ虹の広場』を去りました。
 その後は、メキシコ風のロックガーデン等を見学し、午後4時過ぎ、僕らは『伊豆シャボテン動物公園』を後にしました。
『シャボテン動物公園』という名前にも関わらず、シャボテンの展示については、個人的にはまぁあれでしたが(笑)、カピバラさんを中心とした動物関係で楽しめたので、伊豆の中でも屈指の楽しい観光施設であると思います。
 帰り道も行きと同様、一般道路にてのんびりと自宅を目指した結果、午後7時頃に帰宅。無事に企画終了となりました。
 帰宅後に、どうにもパチンコが打ちたくなり、しれっと家を出て行く僕を、嫁が心底蔑んだ目で見ていたのは、また別のお話です。
 それはさておき、総括を。今回の伊豆旅行は念願の伊勢エビも食べられて、カピバラとも触れ合えて、大変に満足の行く旅行でした。
 当初、僕に付き合わされる形となった嫁からも、
「思いのほか楽しかった」
 との言葉が出たので、自己満足ばかりでもないかと。
 まぁ強いて言えば、ほとんどトラブルらしいトラブルがなく、企画のわりにブログのボリュームが伸びなかった(テレビ的な表現をすれば撮れ高が少ない)のが、唯一の難点だったなぁ。
 そのことを嫁に告げると、
「じゃあなに? 私がジョイトイ君のように奔放に振る舞えばいいわけ? それがお望みならそうしますけど?」
 とのこと。
 おお、怖い怖い。稲川淳二より、よっぽど怖いぜ。
 戦慄したところで、また次回作でお会いしましょう。 (私の愛したカピバラ 完)


 Cast


ゲン
 嫁


スタッフ


文章:ゲン
シリーズ構成:ゲン
テーマソング:『炎のたからもの』ボビー
企画:美食倶楽部
制作総指揮:ゲン

私の愛したカピバラ(第7話)

 ソフトクリーム攻防(?)で、若干の時間を費やしましたが、晴れて『カピバラ虹の広場』にやって来た僕は、喜び勇んで広場に入りました。
 しかし! カピバラはいるものの、どうみても人間の方が多い(笑)。6年程前に、お近くの伊豆アニマルキングダムの触れ合い広場で見たカピバラの周りには、こんなに人はいなかったのに。
 どうやらこの6年でカピバラ人気が急上昇した模様です。
 小さい子供もいる中、それを押しのけて36才のおっさんがフィーバーするのもなぁ……。しかし、ここまで来たからには、カピバラと触れ合いたいのぅ。
 そう思って遠目にカピバラを見ていた僕は、あることに気付きます。カピバラは手ぶらの人には興味がなさそうにそっぽを向き、ただただ餌を持つ人に近寄って行くのです。当然といえば当然ですが。
 フフフフ。子供たちよ、おじさんはお金を持っているのだよ。
 最低な大人オーラを全身に纏いつつ、カピバラの餌コーナーに向かいます。すると、ここにある餌の青草が、なんと1束200円。束と言っても、ホント僅かな束なのです。
 こっ、これで200円かよ!
 いわゆるお祭り価格に驚きながらも、ここで引くわけにもいかないので、200円を箱に入れて、青草を手にします。
 そして嫁に満を持して、自分のスマホを渡し、
「これで俺とカピバラさんの雄姿を撮って……」
 と、依頼している間に、本日最大級の事件が発生したのです。(つづく)

私の愛したカピバラ(第6話)

 巨大な人口の建造物は、見上げるばかりの巨大な鳥のモニュメント。
 いったいなんだろうと近寄ると、温室への入り口でした。
 伊豆シャボテン動物公園というだけあって、よく考えてみりゃ、動物ばっかじゃなくて、そりゃシャボテンを展示しているわな。
 南アメリカ館、メキシコ館など、地域名を冠したソーラーハウスが建てられており、そちらに各地のシャボテンが育成されており、それを見てまわる造りです。
 しかし、余程シャボテンに精通した人でないと、ソーラーハウスごとの特色を理解できないのでは? というのが、僕の素直な感想です(苦笑)。どこもほとんど同じに見えたよ。サボテンだもの。不勉強と言われれば、それまでですがね。
 各国のソーラーハウスを見終えると、そのままシャボテンを販売している施設に直結していました。
 シャボテンは育成に手間がかからないと言うので、買っても良かったのですが、他の土産物も欲しかったし、伊東マリンタウンで予想外に出費したので、ここは断念。カピバラ型の鉢に入ったやつとか良かったんですけどね。
 そこを出ると、通常の売店があったので、そこで各種お土産を購入。つってもすぐに来られる伊豆なので、必要最低限しか買いませんでした。
 買物を終えたところで、午後3時前。園内の案内によれば、アニマルショーの時間だったので、会場へと移動しました。このときは動物VS人間の3本勝負(もちろん闘いではなく競技ですよ)といった内容だったのですが、どうも1日3回ショーがあり、都度ショーの内容は変わる模様。お客さんが1日楽しめるように、企業努力しているんだなと、妙なことに感心しました。
 アニマルショーを見終えた僕らは、いよいよ本日のメインイベント、カピバラとの触れ合うことができるその名も『カピバラ虹の広場』へと向かいます。
 その道中、普通にクジャクとすれ違うなど、かなりシュールな雰囲気の園内を歩いているうちに、僕のはやる気持ちを逆なでするかの如く、嫁がソフトクリームを買い始めます。僕もソフトクリームは好きなのですが、食べたあと超高確率(たぶん97%ぐらい)で腹痛を起こすので旅先では絶対に食べない(食べるときはミニストップで購入し、持ち帰って自宅で食べます)ので、ここはじっと我慢。
 待っていてくれ、カピバラッ! (つづく)